八坂神社(やさかじんじゃ)と龍神
「祇園さん」と呼ばれ、京都市民から長く親しまれてきた八坂神社。
全国にある「八坂神社」や「素戔嗚尊(すさのをのみこと)」を祭神とする神社の総本社です。
元々は、「感神院」または「祇園社」と呼ばれていましたが、慶応4年(1868年)「八坂神社」と改称されました。
御祭神は、「素戔嗚尊(すさのをのみこと)」、「櫛稲田姫命(くしいなだひめのみこと)」、
その子供「八柱御子神(やはしらのみこと)」です。
ご利益は、開運成就や疫病退散などです。
八坂神社には楼門が二か所ありますが。左の写真はその内の一つである「西楼門」、国の重要文化財に指定されています。
本来は「南楼門」が正門ですが、こちらの「西楼門」は、交通量の多い東大路通りに面していて、電車やバスを利用して参拝に訪れた人の多くはこの門から入るため、八坂神社の楼門といえばこちらがよく知られています。
本殿
八坂神社の中央にある朱塗りの大きな建物が、国の重要文化財にも指定されている「本殿」です。
屋根は高さ15m、広さは400坪にも及ぶ大きさで、拝殿と本殿を覆った建築様式は「祇園造」と呼ばれます。現在の本殿は1654年に、徳川4代将軍の家綱が再建したものです。
本殿の地下真下には池があり、「青龍」が住んでいて、土地のエネルギーが集まり、京都の街を守護しているいわれます。10km離れた、東寺や京都市内の池と繋がっているとも言われています。
本堂の東の柱の上部にある龍の彫刻は、「龍吼(りゅうぼえ)」が呼ばれています。
龍吼に向かってと手を鳴らすと、龍が反応するかのように音が反響するそうです。
舞殿(ぶでん)
本殿のすぐ南にあります(写真、舞殿の後ろが本殿)。
舞踊などの各種奉納行事や結婚式などが行われます。
「祇園祭」の際には三基の神輿が置かれ儀式が行われます。また、「新春の豆まき」の行事では、著名人によって豆や記念品が撒かれます。
沢山の提灯は、祗園の御茶屋や料亭から寄進されたものです。夜になり明かりが灯った境内は風情があります。
人気の摂社・末社
八坂神社の境内には摂社、末社が数多く鎮座し、見どころがいっぱいで、ご利益も様々です。
大神宮社・祇園の御神水(力水)
「伊勢神宮」の京都出張所。ご祭神は、伊勢神宮内宮の神様「神様天照大神(あまてらすおおみかみ)」、伊勢神宮外宮の神様「豊受大御神(とようけのおおおかみ)」です。
神殿は、伊勢神宮の撤廃材を用いて造られています。
大神宮社の前には「力水」と呼ばれる御神水が湧いています。
「祇園神水」とも呼ばれ、八坂神社本殿の下にある龍穴から湧き出しているといわれています。
多くの参拝客が手を浸したり、持ち帰ったりします。
顔につけると美人になれるという言い伝えがあり、祗園界隈の芸妓・舞妓さんたちからも愛用されているとのことです。
力水は飲用はできません。お清めのお水として使用するもので、飲用は別に八坂神社で販売されています。
大国主社
こちらは縁結びの神様「大国主命(おおくにぬしのみこと)」が祀られています。出雲の神様で大黒(だいこく)さんともいわれる福の神です。
ハートの絵馬は撮影スポットとして人気で、大国主社の前にはよく行列ができています。
大国主社の前に在るのが「大国主命」と「白うさぎ」の像です。
「因幡の白兎(いなばのしろうさぎ)」がモチーフになっています。
大国主命は、他の神様にいじめられていた白兎を助けました。助けられた白兎は、お礼に美しいお嫁さんを大国主命に授けたという神話があります。
美御前社(うつくしごぜんしゃ)・美容水
美の神様が祀られているので、美容にご利益があるとされており、女性を中心に多くの観光客がお参りに訪れます。
御祭神は、宗像三女神(むなかたさんじょじん)と呼ばれる容姿端麗な3人の女神様、多岐都比売命(たぎつひめのみこと)、市杵島比売神(いちきしまひめのかみ)、多岐理比売神(たぎりひめのかみ)です。
美の神様が祀られていることで、化粧品店や美容室が奉納した旗がズラリと並んでいます。
美御前社には「美容水」という御神水がと湧き出ています。
この美容水を肌に付けると美しくなれるとされていて、美容水前には女性が列を作ることもあります。
刃物神社
ご祭神は「天目一箇命神(あめのまひとつのかみ)」で、製鉄、鍛冶の神様です。
京都は平安時代より「刃物発祥の地」として知られ、鍛冶屋さんがお参りされる神様です。
「いい刃の日」に因んで、毎年11月8日には「ふいご祭」という例祭があり、刃物の供養が行われます。
この「刃物社」は「刃物がよく切れるように」と祈願されていることから、病気を断ち切りたい、悪癖を断ち切りたい、悪縁を断ち切りたい人がお詣りするとご利益あるとされています。
案内板には「苦難を断ち切り未来を切り開く」と書かれています。
北向蛭子神社
祇園蛭子社「北向蛭子社」は、その名の通り北向きに社が構えています。
ご祭神は「事代主神」で、俗に「エベッさん」と称され、福の神、商売繁盛の神様です。
社殿は国の重要文化財に指定されており、平安時代からすでに八坂神社に祀られているといわれています。
境内には「祇園えべっさん」の像が祀られていて、自由に手で触れて福をいただくことができます。
毎年1月9日10日には初蛭子のお祭りが行われ、9日には、蛭子様や大黒天、弁才天ら七福神を乗せた蛭子船を中心とした「蛭子船巡行」があります。こちらの蛭子像も、「商売繁盛で笹持って来い」の掛け声とともに四条通りを進んでいきます。
太田社
ご祭神は「猿田彦命(さるたひこのみこと)」と「宇受女命(アメノウズメノミコト)」で、ご夫婦の神様です。
猿田彦神は、天孫降臨に際に先導の役割を果たし「導きの神」とされています。天鈿女命は、天照大神の天岩戸隠れの時に、岩戸の前で神楽を舞った神様で、「芸能の神様」として信仰されています。
こちらのご夫婦神は日本で初めて結婚で姓を変えた神様といわれ、「夫婦円満」のご利益もいただけるとされています。
悪王子神社
「素戔嗚尊(スサノオノミコト)」の荒魂を祀るお社です。
神の霊魂は2つの側面を持ち、荒魂は、荒ぶる魂、荒々しい側面ですが、「悪い」という意味ではなく「強い」という意味です。
「心願成就」のパワースポットといわれています。
疫神社
ご祭神は「蘇民将来(そみんしょうらい)」です。
神話によると、素戔嗚尊が旅の途中、蘇民将来にもてなされたことへのお礼に、「子孫には疫病を免れさせる」と茅の輪を腰に付けさせました。
7月31日には祇園祭の締めくくりである「夏越祭(なごしさい)」が行われます。
夏越祭では、鳥居に、くぐると厄除けのご利益があるとされる、直径約2mの大きな「茅の輪(ちのわ)」が設置されます。
参詣者は、茅の輪をくぐり、「蘇民将来子孫也」と記された厄除けの護符を授かります。
その他多くの摂社・末社
日吉社
八坂神社の鬼門(北東)に祀られていて、「方除・厄除」のご利益があるとも言われています。
ご祭神は、「大山咋神(おおやまくい の かみ)」と「大物主神(おおものぬし の かみ)」です。
五社
「八幡社」
ご祭神は「応神天皇」、武運の神様。
「竈社(かまどしゃ)」
ご祭神は「奥津日子神(おくつひこのかみ)」「奥津日売神(おくつひめのかみ)」、竈(かまど)の神様で、台所など火を使う場所の守護神。
「風神社」
ご祭神は「天御柱命(あまのみはしらのみこと)」「国御柱命(くにのみはしらのみこと)」、風の神様。
「天神社」
ご祭神は「少彦名命(すくなひこのみこと)」、薬の神様。
「水神社」
ご祭神は「高龗神(たかおかみのかみ)」「岡象女神(みずはのめのかみ)」、水の神様。
祖霊社
亡くなった八坂神社の役員や関係者の御霊がご祭神として祀られています。
厳島社
ご祭神は「市杵島比売命(いちきしまひめのみこと)」。
市杵島比売命は、素盞嗚尊が持つ剣から産まれた三女神の一神です。
容姿端麗で舞を踊ることから、「舞踏謡曲の神様」として、祇園の舞妓さんや芸妓さんに崇敬されてきたそうです。
十社
「ご祭神」
多賀社「伊邪那岐命(いざなぎ の みこと)」
熊野社「伊邪那美命」
白山社「白山比咩命(しらやまひめ の みこと)」
愛宕社「伊邪那美命、火産霊命(ほむすび の みこと)」
金峰社「金山彦命(かなやまひこ の みこと)、磐長比売命(いわながひめ の みこと」
春日社「天児屋根命(あめのこやね の みこと)、武甕槌神(たけみかづち の かみ)、斎主神(いわいぬし の かみ)、比売神(ひめがみ)」
香取社「経津主神(ふつにし の かみ)」
諏訪社「健御名方神(たけみなかたのかみ」
松尾社「大山咋命(おおやまくいくのかみ)」
阿蘇社「健磐龍神(たけいわたつのかみ)、阿蘇都比咩命(あそつひめ の みこと)、速甕玉命(はやみかたま の みこと)」
神馬舎
神馬舎には、「木製の神馬2頭(白馬・赤馬)」が安置されています。神馬舎は昭和3年に建立されました。現在は国の重要文化財に指定されています。
八坂神社には古くから神馬が奉納され、平安時代中期頃の記録が残されています。
馬は神が人間世界にやってくる際の乗り物とされ、神馬は多くが白馬で神聖視されてきました。正月7日に青馬(白馬)を見ると邪気を祓うとされています。
八坂神社では明治8年まで境内に生きた神馬が飼われていたそうです。
大年社
大年社のご祭神は「大年神(おおとし の かみ)、穀物の神様」と「巷社神(ちまたやしろ の かみ)農耕の神様」です。
大年社は、「祇園古宮」とも呼ばれ、例祭日が節分の日であることから「節分の神」とも言われています。
おわりに
京都の観光地として有名ですが、京都の東を守る青龍の地、由緒正しき神社です。京都府内の神社では、「伏見稲荷大社」に次いで2番目の初詣参拝者数とのことです。
京の都に大流行した疫病を鎮めたといわれ、以来、厄除けの社として信仰を集めています。
境内には多くの摂社・末社があり、商売繁昌、厄除け、開運成就、縁結び、美容ご利益など様々なご利益で人気があります。
日本三大祭の一つ「祇園祭」は、八坂神社の祭礼で、歴史の長さや豪華さで全国的に有名です。
また、大晦日の「をけら詣り」も有名で、をけら火を「吉兆縄」に移して、くるくる回しながら家に持ち帰り、その火を火種にしてお雑煮を食べると無病息災が叶うといわれています。
17時以降に閉鎖する神社やお寺が多い京都の中で、夜間も参拝できる珍しい神社です。
八坂神社の門前には、京都を代表する繁華街、花街「祇園」があり、八坂神社参拝と併せて、全国から多くの人が訪れます。
アクセス
住所:〒605-0073 京都府京都市東山区祇園町北側625
電車
京阪電車「祇園四条」駅から徒歩5分、阪急電鉄「四条河原町」駅から徒歩8分
バス
JR京都駅から乗車、市バス100系統「祇園」バス停から徒歩すぐ、JR京都駅から乗車、市バス206系統「祇園」バス停から徒歩すぐ
無休、24時間参拝可
TEL:075-561-6155
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