戸隠神社:天の岩戸ごと投げ飛ばされた天照大神が落ちてきた聖地。古道をたどっての五社巡りと戸隠そば

戸隠神社(とがくしじんじゃ)

長野県北西部、戸隠山の麓に位置する戸隠神社は、2,000年以上もの歴史ある神社です。

「戸隠」の名の由来は日本神話によります。

天照大御神(あまてらすおおみかみ)」が天の岩戸(あまのいわと)に隠れていたとき、その岩戸ごと投げ飛ばされ、落ちた先が現在の戸隠とされています。

「天岩戸開き神話」」にまつわる神様が御祭神として祀られている奥社・中社・宝光社・火之御子社と、土地の農耕の神様である九頭龍が祀られている九頭龍社五社からなります。

 

 「戸隠神社HPより」

 

それぞれ違う神様が祀られ、距離も離れている戸隠神社の五社。
その五社を「戸隠古道」を巡って歩く、一の鳥居から奥社までの約9.8kmのコースがおすすめです。五社巡りのコースであれば3時間ほどで歩くことができます。     

      

九頭龍社・奥社

奥社

戸隠神社の御本社です。

 

 

御祭神は天手力雄命(あめのたぢからおのみこと)

天照大神は、弟の須佐之男命(すさのおのみこと)の粗暴な行いを嘆いて、天の岩屋の中にお隠れになってしまい、世の中が真っ暗になってしまいました。
その天照大神が岩戸を少し開けたときに、岩戸を引き開け天照大神を岩屋から引っ張り出したのが、天手力雄命です。

手力の強い男の神様のため、ご利益は「開運」「心願成就」「スポーツ必勝」があるとされています。

 

 

奥社の狛犬

 

九頭龍社(くずりゅうしゃ)

九頭龍社奥社よりも前に創建され、戸隠神社の五社のなかでも最も古いお社です。

他の四社には天の岩戸伝説に登場する神々が祀られているのに対して、九頭龍社は地主の神様が祀られており、他の四社と性格が異なります。

 

 

御祭神の「九頭龍大神(くずりゅうおおかみ)」は、古くから地主神として信仰され、地元の人々から厚い信仰を受けてきました。

 

「九頭龍大神」は、九つの頭を持った龍で、龍は水を司る水神です。
古くから生活や農耕に必要な水をもたらす、水を司る神様として祀られてきました。

そして、水は生命の源であることから、縁結びにも御利益があるとされ、縁結びの神社としても人気です。

 

奥社への参道

奥社へは約2kmの距離の参道を歩くことになり、往復で約1時間30分~2時間ほどかかります。
奥社の入り口には駐車場もあり、アルピコ交通バスでは「戸隠奥社入口」バス停で下車します。

 

参道の入り口、鳥居前には食事処もあり、外の売店ではソフトクリーム、店内ではお蕎麦が頂けます。また、土産品も販売されています。

 

参道の入り口の大鳥居。手前にはここで馬を下りて歩くことをうながす「下馬碑」が立っています。

 

 

近辺には熊出没に注意喚起をうながす看板がありました。

 

参道入り口から随神門までは徒歩約15分、平坦で緩やかな上り坂が続きます。

 

鳥居をくぐるとすぐにある一龕龍王祠(いっかんりゅうおうし)
戸隠神社の東にある黒姫山の麓にある「種池」の水を汲んで雨乞いをすると、必ず雨が降るという伝説があり、その池の主である「一龕龍王」が祀られているとのことです。

 

しばらく進むと、まもなく随神門が見えてきます。

 

茅葺き屋根の朱塗りの門。お寺での仁王門のような役割とのことです。

 

 

左右に随神が鎮座しています。

 

 

随神門をくぐり、さらに奥社まではさらに徒歩約20分~25分です。
参道の途中には樹齢は400年を超える杉並木が広がっていて、長野県の天然記念物に指定されています。

 

しめ縄がかかった、大きなうろのある杉。2010年にJR東日本が製作した「大人の休日倶楽部」のCMで吉永小百合さんが入った杉だそうです。

 

 

 

 

参道の途中には清潔なトイレも設置されています。

 

澄んだ清流の小川。

 

 

参道の脇には素朴な石仏のお姿もありました。

 

杉木立を抜けると勾配がきつくなり、最後は石段状の上り坂になります。

 

石畳を進むと左側に「飯縄大明神(いいづなだいみょうじん)」と刻まれた石碑とともに小さな社があります。

 

飯縄大明神」とは、長野県の霊山・飯縄山(いいづなやま)における神仏習合の神様です。

超人的な力を持つ「戦勝の神様」として信仰され、足利義満上杉謙信武田信玄など戦国武将たちの間で大変信仰されたとのことです。

 

奥社の手前には社務所が左側にあり、御朱印・御守はこちらでいただくことができます。
1月初旬~4月中旬は雪のため閉鎖されるそうですが、奥社、九頭龍社への参拝は可能です。

 

社務所を過ぎて最後の石段を上がると手水舎があり、さらに登ると奥社の鳥居九頭龍社が見えてきます。

 

 

鏡池

 

戸隠神社の中社から歩いて1時間ほどの距離にあります。戸隠連峰が水面に鏡のように映り込む美しい景色が見られます。特に新緑と紅葉の季節が素晴らしいそうです。
訪れるのにお勧めなのは風の少ない早朝で、景色が水面にもっとも綺麗に映り込むそうです。

池の周囲には遊歩道が整備され、散策が楽しめます。

 

この案内板を目印に入っていきます。

 

樹木に囲まれた道は平坦ですが、徒歩だと片道約30~40分かかります。

 

この景色が見えてきたら到着です。

 

 

宝光社・火之御子社・中社

宝光社(ほうこうしゃ)

麓から登ってきて一番低い位置にあるのが宝光社で、御祭神は「天表春命(あめのうわはるのみこと)」です。天暦3年に奥社の相殿として創建されました。

天表春命」は、中社の御祭神である「天八意思兼命(あめのやごころおもいかねのみこと)」のお子である神様で、安産の神女性や子供の守り神として信仰されています。

 

 

宝光社の拝殿は神仏習合時代の面影を残す寺院建築の様式を取り入れた権現造りで、宮彫りの名工「北村喜代松」による様々な彫刻がほどこされていてます。
特に「親子龍」の彫刻が有名だそうでが、他にも龍・鳳凰・麒麟・唐獅子牡丹・象の木鼻・十二支などの見事な彫刻で飾られており、荘厳な外観となっています。

 

 

 

宝光社の社殿へたどり着くのには270段もの石段を登らなければなりません。

 

 

 

石段の途中、右手に小さなお社が2つあります。

 

 

宝光社の手水舎

 

足の悪い方、体力に自信のない方は緩やかな「女坂」から登ることもできます。

 

社殿に向かって右手に神輿庫があり、二基の神輿(しんよ)が保管されています。

 

 

神道(かんみち)

神道(かんみち)」は、宝光社の境内から火之御子社中社まで通じる「戸隠古道」、森の中の山道です。こちらが神道の入り口となります。

 

 

 

女人禁制で奥院に参詣できない女性たちが、ここで戸隠山や奥院を伏し拝んだところだとのことです。今は木が生い茂って直接目にすることはできませんが、昔はここから奥院が見えたそうです。

 

昭和8年に、NHK長野放送局が日本で初めてここから野鳥の鳴き声を全国に中継したことの記念碑です。

 

熊の出没に注意喚起をうながす案内がこちらでも見られました。

 

ここまで来ると、火之御子社はすぐ近くです。

 

火之御子社(ひのみこしゃ)

 

御祭神は「天鈿女命(あめのうずめのみこと)」。
天照大神天岩戸に籠ったたときに、岩戸の前で舞を踊り、天照大神を天岩戸から誘い出した女神です。

ご利益は「舞楽芸能上達、開運、縁結び、火防」などで、芸能関係の方がよく訪れる神社です。

 

戸隠神社太々神楽(だいだいみかぐら)は、この神社に仕えていた社人によって古来より現在に伝えられています

 

 

火之御子社の手水。

 

樹齢約500年の「夫婦杉(めおとすぎ)」、結びの杉、夫婦杉などとも呼ばれています。
一つの根から2本に分かれて、寄り添うようにそびえており、縁結びの御利益があるそうです。

 

 

「西行桜」、種類はオオヤマザクラとのことです。
西行法師火之御子社のあたりで、桜の木の下で遊んでいた子供たちをからかおうとして反対にやりこめられ、「さすが戸隠権現のお膝下にすむ子供たちの賢さに驚き、これ以上先に進んだら思いもよらない失敗をするかもしれない」と、この桜の木のもとから引き返したといわれています。

 

 

中社

 

御祭神は「天八意思兼命(あめのやごころおもいかねのみこと)」。
天照大神が天岩戸にお隠れになってしまったときに、天岩戸を開くための知恵を授けたことから知恵の神様として知られ、御利益は「学業成就、試験合格」「商売繁盛、開運、家内安全」とされています。

 

 

 

 

中社の手水舎

 

社殿に向かって右手にある「青龍殿」は、宝物館になっている建物です。
戸隠神社の歴史や風俗が展示され、戸隠神社の宝物や歴史的な資料を見ることが出来ます。

 

社殿に向かって左手にある中社の社務所
冬に雪が多くなる時期は「奥社」「九頭龍社」「宝光社」の社務所は閉鎖されます(参拝はできます)。「火之御子社」は社務所がないので、冬のシーズンは五社の御朱印は全て中社でいただくことになります。

 

社殿に向かって右側に「さざれ滝」。
山の湧水が流れ落ちる小さな滝は強い浄化のパワーがあり、パワースポットとして知られています。

スマホの待ち受け画面にすると金運がアップするとも言われています。

 

 

樹齢800年を超える「三本杉」、然記念物に指定されています。
三本の杉が並んでいるのではなく、一本の杉が三叉に分かれています。
三本杉には目の前まで近寄ることができ、直接手で触れることが出来ます。

 

本殿の真向かいにある樹齢700年の「御神木」。幹回りは7mもあるそうです。

 

戸隠そばの大人気「うずら家」のすぐ隣にある杉の巨木。

 

「観光情報センター」の近くにある杉の巨木。

 

中社の鳥居前は広いスペースになっていて、バス停もすぐ目の前です。

 

鳥居をくぐると、拝殿へ続く急な石段の男坂になります。

 

男坂を上った先には狛犬が2対、合計4体います。

 

急な石段を上るのが困難は人には、男坂の左手にあるゆるい傾斜の女坂から上がることができます。

 

中社の前にはお土産物屋もあります。

 

中社の鳥居前にある「戸隠観光情報センター」。 
観光案内スタッフが常駐しており、パンフレットや観光地図などが揃っていて、戸隠観光の情報を集めることができます。
綺麗なトイレ、無料休憩スペースがあり、無料WiFiも利用できます。

 

戸隠そば

戸隠神社に参拝した際の食事は、やはり日本三大そばの一つとされる戸隠そばをいただきたいところです。戸隠周辺には30店以上のそば店があるそうで、おそば屋以外の食事処を探すのが難しいくらいです。

戸隠そばの歴史は、平安時代、山岳修験者の携帯食としてそば粉が珍重されたことに始まりまるそうです。

 

 

 

数ある戸隠そばの名店の中でも人気なのが、中社のすぐ前にある「うずら屋」。この日はこちらでいただきました。
9時頃に予約の紙に名前を書いて開店時間に戻り入店できました。平日でしたがその時点で満員で行列ができていました。

 

戸隠そばをざるで注文すると、「ぼっち盛り」と呼ばれる、一口ぐらいの量に束ねられたそばを5~6束をひとつのざるに並べる盛り方で出てきます。
ぼっち盛りは切れたり折れたりした不揃いなそばは外され、見た目も良いそばのみ使われます。

この盛り方は、戸隠そばが神様へのお供えや、高貴な方へのおもてなし料理として地域に定着してきたことによるものだそうです。

この日、注文したのは「天ざるそば」。

 

宿坊

この日、宿泊したのは宝光社のすぐ近くにある宿坊「山本館」。宝光社からすぐ近くにある、1000年以上の歴史のある宿坊です。

 

部屋は綺麗で落ち着く造り、お風呂もゆったりして清潔でした。

 

泊まった部屋のすぐ下に、戸隠神社宝光社の麓から湧き出る不動滝がありました。部屋にはずっと滝の水音が心地よく届いて癒されました。
滝の水は目の病に効くとされ、信仰を集めているそうです。

 

滝の上には不動明王が祀られています。

 

朝は7時から戸隠山九頭龍大神が祀られた別棟の大神殿で朝拝があり、宿泊者も希望すれば参加することができ、祈祷をしていただけます。

 

HP https://shukubo-yamamotokan.com/#

 

おわりに

戸隠は長野市市街と比較して気温が5度ほども低く、夏は8月でも平均最高気温約25度、平均最低気温約15度ととても過ごしやすいです。

一日で五社を巡ってお詣りを済ませることも可能ですが、できれば宿坊に泊まり、戸隠そばを味わい、のんびり過ごすがおすすめです。

公共通機関のバスを使って戸隠を訪れるさいは、戸隠への往復と、戸隠エリアでの自由な乗り降りが可能な「戸隠高原フリーきっぷ」を使って周るのが便利です。
戸隠の一部の施設やお店、そば屋
での割引サービスもあります。
また、「善行寺」までの片道バス券も付いており、戸隠からの帰りに途中下車してお詣りすることもできます。

アクセス

住所:〒381-4101  長野県長野市戸隠3690

バスを利用の場合は、長野駅7番乗り場(アルピコ交通バス長野駅前総合案内所前)から、アルピコ交通 「ループ橋経由戸隠高原行き」に乗車(約1時間)。

宝光社:戸隠宝光社下車
中社:戸隠中社下車
奥社:戸隠奥社入口下車

冬期は戸隠スキー場行きになるため、奥社バス停には停車しないため、中社から徒歩またはタクシーを利用することになるようです。

戸隠神社HP https://www.togakushi-jinja.jp/

戸隠観光協会の公式HP https://togakushi-21.jp/

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