春日大(かすがたいしゃ)
神護景雲2年(768年)、平城京の守護と国民の繁栄を祈願するために、「称徳天皇」の勅命により、三笠山(御蓋山:みかさやま)の麓に創建された神社です。 中臣氏、藤原氏の氏神を祀っており、全国に約1,000社ある「春日神社」の総本社です。
御祭神は、鹿島神宮から「武甕槌命(タケミカヅチノミコト)」、香取神宮から「経津主命(フツヌシノミコト)」、枚岡神社から「天児屋根命様(アメノコヤネノミコト)・比売神(ヒメガミ)」を招いて、祀られています。
国宝の本殿は春日造りの華やかな社殿で、回廊内のさらに奥、中門と御廊によって囲まれた内側に四棟並んで鎮座しています。
第一殿 天児屋根命(ご利益)国家安泰、家内安全、夫婦和合、開運招福
第二殿 比売御神(ご利益)夫婦円満、安産、子授け、除災
第三殿 経津主命(ご利益)商売繁盛、病気平癒、元気回復、交通安全、武運守護
第四殿 武甕槌命(ご利益)必勝、厄除け
平成10年に「古都奈良の文化財」の一つとして、春日大社と春日山原始林が世界遺産として登録されています。
中門・御廊
中門
中門は南門を入った正面、本殿のすぐ前に位置する楼門で約10mの高さがあります。中門正面の唐破風(からはふ)は明治時代に取り付けられました。この門のさらに奥に、春日大社の本殿は鎮座しています。
直接、本殿には近づくことはできないため、こちら中門かあ本殿へ向かって一般参拝者が参拝する場となります。
春日大社の正門である「南門」をくぐると正面に「幣殿(へいでん)・舞殿(ぶでん)」が一棟になった神拝所があります。東側2間が幣殿、西側3間が舞殿です。
幣殿は天皇陛下のお供え物である御幣物を一旦納める建物です。
舞殿は宮中伝来の御神楽を行うための建物であり、また雨天時に神楽や舞楽を奉納する場所です。
神拝所までは参拝料は不要ですが、その先、中門・御廊までは特別参拝料が必要となります。
特別参拝受付で参拝料を納めると、本殿をより近くで参拝することができ、中門や御廊を間近で見たり、廻廊の中をまわることができます。
また、「御蓋山浮雲峰遙拝所」や「藤浪之屋」も拝観できます。
御廊・回廊
「回廊」は、春日大社本殿全体を取り囲むように四方に伸びる長細い建物です。
中門から右側が東御廊、左側は西御廊で、いずれも国の重要文化財です。
回廊は、様々な時代に寄進された「釣燈籠」が約1000基も吊り下げられていて、見どころとなっています。1000基の釣燈籠は、貴族や武士を始め広く一般国民より奉納されたものです。
手力雄・飛来天神社遥拝所
東の御廊の東端に「手力雄・飛来天神社(たぢからお・ひらいてんじんじゃ)遥拝所」があります。直接参拝できない「手力雄・飛来天神社」の神様に祈りを捧げる場所になっています。
手力雄神社のご祭神は「天手力雄神(あめのたぢからおのかみ)」で、勇気と力の神様です。
飛来天神社のご祭神は「天御中主神(あめのみなかぬしのかみ)」で、「空の旅の安全を守る神様」です。
御蓋山浮雲峰遥拝所(みかさやまうきぐものみねようはいしょ)
本殿の南側にある小さな「遥拝所」です。春日大社の神山であり、一般の方は立ち入ることが出来ない禁足地「御蓋山(みかさやま)」の山頂、「浮雲峰」にある「本宮神社」へ祈りを捧げる場となっています。
本宮神社のある山頂付近「浮雲峰」は、鹿島神宮から招かれた「武甕槌命」が白鹿に乗って降り立った地とされていて、春日大社の創建神話が始まった場所となっています。
藤浪之屋
北回廊の端に、重要文化財であるの「藤浪之屋(ふじなみのや)」があります。
かつては、神職の詰所だった建物です。
年に3回、節分の日と8月14日・15日に行われる、春日大社の一大行事「春日万燈籠」。
3000基有るともいわれる春日大社の燈籠全てに火が灯される行事です。
その万燈籠を体験してほしいとのことで、万燈籠が再現されていて、暗闇の中で光る燈籠の美しさ、雰囲気を感じ取ることができます。
藤浪之屋では、ロウソクではなく、LED電灯で釣燈籠が灯されています。
回廊の途中に案内板、説明の立札があります。
こちらが、藤浪之屋の入口付近です。
摂社・末社
春日大社の「摂社」「末社」は、全部で61か所にも及び、その分布は境内だけでなく、奈良駅周辺の市街地にも点在しているとのことですが、そのうちの回廊内にあるいくつかのお社です。
多賀神社
西回廊と北回廊が交わる北西隅にある末社です。平安時代の久安2年(1146年)に、近江国の多賀大社から神様を勧請されて創建された神社で、御祭神は「伊弉諾命(いざなぎのみこと)」が祀られています。
ご利益は「延命長寿」で、「仕事の完遂をお導きになる神様」として知られています。
岩本神社
本殿近くの「社頭の大杉」と呼ばれる御神木の根元にある小さな末社です。
御祭神は住吉三神の「表筒男命(うわづつのみこと)」「中筒男命(なかづつのみこと)」「底筒男命(そこづつのみこと)」が祀られています。近世までは「住吉神社」と呼ばれていたとされていますが、別のに社である「住吉神社」が存在するため、混同を避けるために名称が変更されたと考えられています。「和歌の神様」であり、「受験合格」へのご利益で知られています。
「社頭の大杉」は高さ23メートルを誇る、樹齢1000年の杉の巨木です。
鎌倉時代の「春日権現験記」には、幼木の姿で描かれているとのことです。
椿本神社
「藤浪之屋」のすぐ南側にある末社です。御祭神は、勇猛果敢な春日明神の脊属神である「角振神(つのふりのかみ)」で、「隼の明神(はやぶさのみょうじん)」ともよばれ、天魔退散・攘災の神様で、災難を祓うご利益があると言われています。
椿の木が付近にあったことから、椿本神社と呼ばれるようになったとも伝えられています。
風宮神社
本殿の真西にあり、本殿を西風の害から守ると同時に、外敵を吹き払う神様であると考えられています。
御祭神は風の神様として知られる「級長津彦命(しなつひこのみこと)」と「級長津姫命(しなつひめのみこと)」で、生命の神様、子授けの神様として敬われ、また罪や穢れを「風」によって吹き流して下さる、お祓いの神様ともされています。
八雷神社 海本神社 杉本神社 佐軍神社
「春日大社後殿各社参拝所」は、本殿の裏手にある末社を参拝するための場ですが、明治期に閉鎖されて以降は封鎖され続けていて、末社群へ参拝することが出来ませんでした。
しかし近年の第六十次式年造替に際して約140年ぶりに開門され、末社の社殿を目にしながら参拝することが出来るようになりました。
「後殿御門」と呼ばれる小さな門が開いており、その門の正面から参拝する形となっています。
門は開いていますが、内部には入れません。
「八雷神社(はちらいじんじゃ)」の御祭神は「八雷大神(はちらいおおかみ)」が祀られていまいて、「雷の力で人々に幸せをもたらす神様」として電力・通信関係などからの信仰されています。
「佐軍神社(さぐんじんじゃ)」の御祭神は「布津之霊大神(ふつのみたまのおおかみ)」が祀られていて、「悪縁を断ち平穏をお守り下さる神様」とされています。
「杉本神社」の御祭神は、山の神様として知られる「大山咋神(おおやまぐいのかみ)」が祀られていて、「建物の高層階で生活する人々の安全をお守り下さる神様」とされています。
「海本神社(かいもとじんじゃ)」は御祭神は、「大物主神(おおものぬしのかみ)」が祀られていて、「五穀豊穣・食の安全を守る神様」とされています。
参道~南門
「一の鳥居」から春日大社本殿まで伸びる砂利の敷かれた道が「表参道」となっていて、道幅の広い参道が1キロ以上続いており、年間を通して大勢の観光客が行き来します。
参道の石灯籠
参道に入ると、奉納された多数の石燈籠が左右にたくさん並ぶ景色が続きます。
春日大社は、燈籠の数が日本一多い神社で、参道から本社まで合わせて、石燈籠約2,000基、釣燈籠約1,000基もの燈籠が並んでいます。
古い時代のものは苔むしていたり、彫られた文字が薄くなっていて、年代を感じさせられます。
参道の鹿
春日大社がある奈良公園といえば野放しで生息する鹿が有名ですが、その数は約1200頭ほどで国の天然記念物にも指定されています。
鹿島神宮から招かれた御祭神の1柱である「武甕槌命」が、「白鹿」に乗って奈良の御蓋山に降り立ったとされており、そのため鹿が神の使いとされています。
神の使いとしてやってきた白鹿が子孫を産み、それが「奈良の鹿」になったとされています。
燈籠には鹿の紋様が彫られているものが多くあります。
鹿島神社にも境内に「鹿園」があり、鹿が飼育されています。
二之鳥居
二の鳥居は、一の鳥居から1キロ以上歩いて到着します。本殿に近い場所に設けられている大きな鳥居です。
伏鹿手水所(ふせしかのてみずしょ)
二之鳥居をくぐると「祓戸神社」の脇に、金属製の「伏鹿の手水所」があります。
巻物をくわえた鹿の口の部分から水が流れ出るようになっていて、柄杓でその水を受けて手と口を清めます。
春日大社本殿を参拝する際の正式な作法として、こちらの手水舎で身を清めてから、隣にある祓戸神社を参拝し、罪穢れを払って本殿にお参りします。
祓戸神社
「祓戸神社(はらえどじんじゃ)」は、二の鳥居をくぐってすぐ、伏鹿手水舎のすぐそばにある末社で、奈良時代からの歴史ある古社です。
御祭神は、罪や穢れを祓う神として知られる「瀬頼津姫神(せよりつひめのかみ)」です。
本殿を参拝する前に、こちらで罪や穢れを取り除いていただきます。
南門
「南門」は長い参道の終点にある春日大社の正門で、国の重要文化財となっており、本殿の正面に位置します。
元は鳥居だったものですが、1179(治承3)年に楼門に改められました。高さ12メートルもあり、春日大社境内では最大の門となっています。
ここをくぐり進むと、いよいよ「幣殿・舞殿」、「南門」になります。
榎本神社
南門の手前近くにある摂社です。
「榎本神社」には春日大社が創建される前の春日神、もともとこの土地を守っていた土地神様が祀られています。
御祭神は、現在は「猿田彦大神」が祀られていますが、かつては「巨勢姫明神」という女神が祀られていたと言われます。ご利益は寿命を守り給う神様として健康長寿です。
おわりに
長い参道は石灯籠が並び趣があり、本殿周辺も見どころがもりだくさんで、境内は魅力的な摂社・末社が数多く点在し、訪れるとあっという間に時間が過ぎてしまいます。
春日大社を含め、奈良公園といえば生息する野生の鹿が有名ですが、参道でも観光客のすぐ側を歩いたり、佇む可愛らしい姿が見られます。
人気なのが、木製の鹿が口におみくじを咥えた可愛らしい「鹿みくじ」で、木彫りの「鹿みくじ」と、陶器で出来た「白鹿みくじ」の2種類がありますが、口にくわえているおみくじは同じものだそうです。
木彫りの「鹿みくじ」は、手作りでひとつひとつ作られているので、鹿の表情も少しずつ異なるそうです。
アクセス
住所:〒630-8212 奈良県奈良市春日野町160
近鉄奈良駅下車、徒歩約25分
JR奈良駅、近鉄奈良駅から奈良交通バスで、春日大社本殿行「春日大社本殿」下車すぐ。
または市内循環・外回り循環「春日大社表参道」下車、徒歩10分
TEL:0742-22-7788
本殿の拝観時間:9時~16時 本殿特別参拝料金:500円
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